外反母趾でお悩みの方は何とかしようと、様々なストレッチに取り組んでいる方もおられるでしょう。
実際にネット上でも様々な足や足指のストレッチが上がっています。
外反母趾に良いとされるストレッチの効果について、外反母趾発生のメカニズムの面から詳しくお伝えします。
外反母趾とはどんな状態のことか
外反母趾とは、親指の付け根辺りが横に広がり、出っ張ってしまった状態。
痛みは出ない方もおられます(痛みは無くても、その影響はあちこちに出ているので要注意です)
あなたが外反母趾かどうか、またその程度については以下の様なチェックでわかります。
外反母趾の基準とセルフチェック
外反母趾に良いとされるストレッチ
外反母趾に良いとされるストレッチをいくつか写真付きで例を挙げてみます。
これは足の指をそらすストレッチ。
こちらは先ほどのストレッチとは逆に、足の指を伸ばすストレッチ。
このような外反母趾改善のためのストレッチは、動画でネットに上がっていたり、治療院で教えられたりしています。。
しかし私は外反母趾改善の専門家としての立場と経験から言うと、基本的にこれらはどれも効果は無い、と思っていただいてよいでしょう。
ストレッチで良くなることは、残念ながらありません
もう一度結論から言うと、これらのストレッチで外反母趾が改善していくことは、基本的にはありません。
それはなぜか、なぜそこまではっきり言いきれるのか。
それは私のこれまで現場での経験上なだけでなく、外反母趾発生の仕組みから言ってもそうなのです。
それをご理解いただくために、まずは外反母趾発生のメカニズムからご説明します。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の状態。
この形では土踏まず(アーチ)があって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
この状態を専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まず(アーチ)が低く落ちて、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままでは、その衝撃が直通で膝や股関節に行き、痛んでしまいます。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、、足はあなたが考えなくても自然に「ぐらぐら足」の形に移行しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻る。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、別に私が見つけ出した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
外反母趾がストレッチではよくならない理由
いかがでしょうか?
外反母趾はあなたの良くない足の使い方・歩き方が原因の「生活習慣病」だということがご理解いただけたでしょうか?
では、いくら今のその状態をストレッチなどで緩和したとしても、その歩き方がそのままなら改善するわけはない、というのもご理解いただけるのではないでしょうか。
もしあなたが「ストレッチ後数時間~数日は、まし」を「治った、改善した」というなら話は別です。
これは肩こりなどに例えると、話は分かりやすいかもしれません。
もしあなたの肩こりが悪い姿勢のせいで発生しているとすれば、ストレッチで治りますか?
肩こりを治すために、よく「○○筋を伸ばせば・ほぐせば」などというのを聞きます。
そしてそのための手法やストレッチが良くネット上に上がっています。
確かにそれをやると、その時は気持ちいいでしょう。
しかし悪い姿勢のせいでその○○筋がこわばっているのなら、姿勢を正さない限りその効果は一時のもの。
そうなればしょっちゅうストレッチをするか、頻繁にもみほぐしてもらうしかなくなります。
あなたはそれを「肩こりが治った」とは言わないはず。
姿勢を正し、それが習慣化されるまでいかなければ、本当の意味で治ることはないはず。
逆に言えば、肩こりもそうやって原因を解消できれば、根本的に改善し発生はしなくなります。
そしてこれは外反母趾も全く同じ話。
もうお分かりかと思いますが、先ほどお伝えした「歩き方」という問題の解決こそが、外反母趾の改善をもたらすのです。
やらないよりは、まし?
もし歩き方で外反母趾が改善するとしても、ストレッチもやらないよりはやったほうが良いのでは、という方もおられるでしょう。
これも残念ながら、正しくはありません。
なぜなら外反母趾は足の横幅が伸びてしまっている状態。
なので伸ばすのは逆効果。
そして患部周辺のこわばりは「怪我におけるかさぶた」の様に、ある意味での保護となっている場合が多いのです。
なのでむしろ、歩き方も修正しきれていない段階でこわばりを取ってしまうと、逆に痛みが増したり足元がぐらついたりすることさえあるのです。
こわばってしまっている箇所は、良くない歩き方のせいでこわばっているだけなので、正しい歩き方ができる様になれば、自然とこわばりは取れていきます。
以上のような理由で、外反母趾改善のためにストレッチをすることは、避けたほうが良いのです。
外反母趾は本当に歩き方で改善するのか?
しかし外反母趾の主原因が良くない歩き方だったとして、本当にその歩き方を変える程度で元の形に戻っていくのでしょうか?
私のもとを訪れる患者さんも、当初は足の指には一切触れない私のやり方に、不安を覚えるようです。
しかし例えばひざをすりむいたとしても、余計なことさえしなければ時間とともに治っていく様に、外反母趾も負担になっている原因(歩き方)さえ改善できれば、元に戻ろうとしていってくれるのです。
そんないくつかの改善例を挙げてみます。
この方の左足はもうすぐ重度(40度以上)に届こうかという状態だったのが、約4か月で正常(15度以下)手前まで改善しています。
この方は80代の方。ご年配であっても、同じように大幅に改善しているのが見て取れます。
これらの方の外反母趾の改善に、足指は一切触れていません。
このような改善は私たちにとっては珍しくなく、公開許可を得ているものだけで1000例を超えるのです。
まとめ
外反母趾の改善に、ストレッチは必要ありません。
それは外反母趾の発生の仕組みからして「有効ではない」「逆効果の場合も多い」ということと、「せずとも治すことができる」という両面からそういえます。
外反母趾はあなたの良くない歩き方が原因の「生活習慣病」。
人間には自然治癒力が備わっているので、その原因を取り除ければ、それだけで改善していくことが可能なのです。