近年は外反母趾や浮指や偏平足等、「足の問題」を抱えた幼い子供さんが増えています。
特に外反母趾は、場合によっては痛みも伴うようになってしまうので、その兆候を見つけたらいち早く対処してあげたいものです。
このページでは子供の外反母趾の見分け方や、その対処法についてお伝えします。
外反母趾とはどんな状態のことか
まず外反母趾とは、親指の付け根辺りが横に広がり、出っ張ってしまった状態。
痛みは出ない方もおられます(痛みは無くても、その影響はあちこちに出ているので要注意です)
あなたが外反母趾かどうか、またその程度については以下の様なチェックでわかります。
外反母趾の基準とセルフチェック
子供も外反母趾になるのか
もしあなた自身が外反母趾ではなかった場合、想像もつかないことかもしれませんが、お子さんでも外反母趾になっていることは、実はよくあります。
それどころか、正確な統計はないので実感としてですが、近年は増えているとまで言われているぐらいです。
私も定期的に幼稚園~小学校低学年のお子さんに向けて、「子供の足の測定会」を開催しているのですが、かなりの割合で外反母趾の子供さんに出会います。
いくつか実例を出してみます。
上の写真の右は幼稚園児、左は小学校中学年のお子さんですが、どちらも外反母趾手前です。左のお子さんは小指側は内反小趾になっており、中程度手前まで進んでいます。
上の写真の右のお子さんは小学校低学年で、右足は外反母趾の中程度まで進んでいます。
左のお子さんも小学校低学年ですが、外反母趾ではないものの小指側が軽度の内反小趾になっています。
お子さんが外反母趾になる原因
外反母趾の原因については、いまだにハイヒールのせいだと思っておられる方も多いですが、それが主原因ではありません。
特にお子さんの場合、ハイヒールをまだ履いたことが無い子が殆どのはず。
では、原因はいったい何なのでしょうか?
原因①遺伝
遺伝的要素も、見過ごすわけにはいきません。
遺伝というよりももっと具体的に言うのなら、「外反母趾になりやすい骨格構造」と言うものがあるのです。
いくつか例を挙げてみるます。
踵の骨の傾き具合
後ろから足を見た時に、この上の写真の左足の様に、足首が内に傾いて踵の骨が外に流れているような状態が通常の状態の場合、外反母趾の素養があると言えます。
ちなみに、下の写真の左足が標準的な状態。
足の指の長さのタイプ
この一番左の「エジプト型」の足の場合、外反母趾になりやすいと言われています。
しかしこれらはあくまで素養・なりやすさであって、決定的な要因ではありません。
むしろ主原因は次にあげる「足の使い方・歩き方」が良くない、ということの方になります。
原因②足の使い方が上手くない、動かし方をよくわかっていない。
私は、患者さんの歩き方という「動作を指導する」という仕事をしていて、運動が得意でない方が「何をどこまで分からないのか」についてが、よくわかるようになりました。
具体例を出してみましょう。
おなかはへこますと、力は入らない
「おなかに力を入れてください」と言うと、おなかをへこませようとする方が、かなりの数おられます。
しかし実は、おなかをへこませるというのは、おなかに力が入りにくい動作なのです。
なぜなら筋肉は、力を入れれば「膨らむ」という性質のもの。
なので腕に力を入れれば「力こぶ」ができて膨らむはず。
なのでマンガなどで、力を入れてTシャツを破るパフォーマンスがあるのも、そういうことです。
もちろん、おなかも同じ。
筋肉は力を入れれば、わずかでも膨らむはずなのです。
ではなぜへこます方がおられるかというと、「状態」と「動作」を混同してしまっているから。
わかりやすく言えば、「たるんだおなか=出ている」「引き締まったおなか=引っ込んでいる」というイメージ(現実?)がありますよね。
そのせいで「力を入れる=引っ込める」と思ってしまっているのです。
しかし、先ほどのイメージはあくまで「状態」の話。
たるんでいようが引き締まっていようが、どちらの方も力を入れるという「動作」をすれば、筋肉は膨張するはずなのです。
ちなみに、この勘違いのせいでおなかに力が入っておらず、そのせいで腰痛持ちになっている方は、かなりおられます。
では、私はおなかの力の入れ方をどこで習ったのかというと、私の場合野球などに打ち込むうちに、勝手に身についたもの。
そして正しくおなかに力を入れることのできる殆ど方も、私と同じはず。
それらの基本動作はわざわざ習うのでは無く、そういう場面で必要に迫られ、いつの間にか身についているのです。
正しい歩き方・走り方を身に着ける機会が減っている
このように「基本動作」は、求められる場面があれば、それをするために試行錯誤し自然と洗練され、いつの間にか身につくということ。
要するに「できる人」には当たり前の動作も、そういう機会を重ねてこなかった「できない人」にとっては、わからないものということになります。
そしてそれは「おなかの力の入れ方」であろうが、もっと簡単に思える「歩き方」という動作であろうが、程度の違いこそあれ同じことなのです。
そしてそれらを身に着けるのは、基本的に幼いころに外を飛び回って遊んだりすることで身につくはずですが、そういう機会は昔に比べ減っています。
そうすればそういう動きを求められる場も、上手い子を見て真似る機会も減ることになります。
私はこれが近年、子供の運動機能が落ちていると言われる、大きな原因のひとつなのです。
お子さんの外反母趾は、こんなところにまで悪影響が
ちなみに、大人であろうが子供であろうが、外反母趾になる主原因は「良くない歩き方」であることは、アメリカなど足の医療の先進国では、すでに良く知られた事実です。
(その良くない歩き方を、専門的には「過剰回内(オーバープロネーション)」と言います)
なので、元の素養(遺伝)として外反母趾などになる傾向があり、しかも動き自体も洗練される機会が無く、個性的な良くない歩き方(過剰回内)のまま。
私たちはこれが、お子さんの外反母趾の具体的な成り立ち、と考えています。
では、お子さんの外反母趾は、どんな問題を引き起こすのでしょうか?
痛くなくても問題アリ
お子さんが痛みを訴えている場合は、もちろんすぐに対処すべきです。
痛みのためそれをかばい、余計に歩き方がおかしくなってしまう場合が多いからです。
では、痛みを訴えていない場合はどうか。
実は外反母趾は、痛み以外の様々な問題にもつながっているので、早期の改善が求められます。
すぐに疲れる
例えば外反母趾の足というのは、通常の足の状態より力が入りにくく、踏ん張りにくいのが特徴。
なのでそれを支えるために常に無用な力を加えているため、早く足が疲れます。
ちょっと歩いただけで「疲れた」「足がだるい」などという場合、それは我慢が無いのではなく、足の状態に問題がある場合もあるのです。
運動下手になる・ケガが増える
また、そのことは運動能力にも直結します。
運動の習い事が上手くならない、足が遅い、すぐにけがをするなどの問題が発生します。
要するに足の使い方が悪いばかりに、運動においてハンデを背負っているということになるのです。
姿勢の悪化
また、足の不安定は姿勢の悪化に直結しています。
「うちの子はいつも猫背で、、、」などという場合、まず足元からチェックするべきです。
学力・集中力低下
最後に、学力にまで影響します。
不安定な足で生活しているせいで、集中力も含め様々な力が奪われることになります。
単純な話、毎日疲労状態。
大人でも、そんな状態で仕事に集中するのは難しいでしょう。
このように子供の外反母趾は、痛み以外にも様々な形で悪影響を及ぼしているのです。
気づいてあげるのは、子供ではなくあなた
これらは、情報を持たないお子さんが自分で気づくことは、まずありません。
なので親御さんが気づき、いち早く対処してあげる必要があります。
にもかかわらず、お子さんの足が外反母趾気味だとわかっても、「痛がっていないし、、」と放置する親御さんもおられます。
確かに、成長過程において学校での運動などで他人と比べ、自分で修正していく場合もあります。
しかし多くの場合、それらは自分では修正できず、それを大人にまで持ち越してしまうのです。
実際に、私の治療院にお越しになる大人の患者さんに話を詳しく聞いてみると、お悩みの症状を幼い時から感じていたり、友人から歩き方がおかしいと指摘されていたりしている場合が、とても多いのです。
しかしそれをどう改善すればいいかもわからず、大人になってやっと問題に直面するということ。
ではあなたのお子さんの足がどんな状態か、チェックするポイントを挙げてみます。
お子さんの足のチェックポイント
見るからに外反母趾が出ていれば、発見はしやすいです。
しかし親御さん自体が外反母趾の角度の基準を知らず、「これぐらいは普通」と思ってしまって見過ごしている場合もあります。
自信のない方はスマホのカメラ機能で、外反母趾を診断できる無料のWEBサービスがありますので、ご活用ください。
また痛みは我慢強い子だと当たり前として、自分からは言わない場合もあるので、ちょくちょく聞いてあげることが必要です。
そのほかのチェックしたいポイントをいくつかあげておきます。
足首は内に倒れていないか。
土踏まずはべったり地面に着いていないか
走ったときなどに、フォームやバランスが悪くないか、極端に遅くないか。
角度の測定以外でいうと、この辺りを総合して判断するということになります。
どうすれば改善できるのか?
結局のところ大人の外反母趾の改善と同じで、歩き方を改善するしかありません。
しかし問題は、「正しい歩き方をしたい」という意欲をどう引き出すのか、につきます。
ご自分がお子さんだったころ、を思い返してみてもらうとよくわかりますが、イヤイヤやっていることや、意味も分からずやれと言われたことは、まず続けることができません。
痛くて仕方がない、という場合なら「この歩き方をすれば痛くなくなるよ」で、ある程度カバーできます。
しかし問題は痛みが無い場合です。
痛みが無い場合の、お子さんの習得意欲の引き出し方
痛くない場合はその子にとって、「取り組む理由」が理解できないことになります。
なのでその子が「歩き方を変えたくなるような持って行き方」をすることが重要です。
例えばその子の今の興味や願望に合わせ、サッカーが上手くなるとか、かけっこが早くなるとか、足がきれいになるとか。
しかもお子さんと言えど、強引な理屈は納得しないので、「そうか、そうだな」と思えるような持って行き方をします。
一番効果的なのは、具体例を挙げて話をすること。
サッカー好きのお子さんには「長友選手(有名サッカー選手)は、走り方や歩き方を変えてからぐんぐん上手くなってんで!」とか。
私の場合はあらかじめ、その子の興味のあることを親御さんに聞いておき、ウソは良くないのでそういう事実を探しておいて、話すようにしています。
お子さん向けトレーニングメニュー
そうして意欲が高まったら、練習メニューを出します。
本来歩き方の改善だけでいきたいのですが、お子さんの場合それが難しいのでその前段階として、正しい足の使い方のクセづけのトレーニングメニューを出しています。
外反母趾のお子さんは、基本的に足への体重のかけ方が「内」かつ「前」になっています。
それを「外(親指を踏みしめない)」かつ「後ろ(かかとに重心を置く)」にするトレーニングです。
具体的には例えば、不安定な足場で片足立ちの訓練をします。
前述のように、その際の重心位置は「外」かつ「かかと」というルール。
親御さんが一緒に「どっちが長く立てるか競争」とか、「何秒行けるか記録に挑戦」などと、ゲーム形式にするとよいでしょう。
そして歩き方も教えます。
これも外反母趾のお子さんは「前のめり」かつ「内荷重」で歩いているはずです。
それを負担のない歩き方に変えるのです。
外反母趾を改善する歩き方(動画)
まずはその場で行進をするように、足踏みをしてみてください。
そしてその動きのまま、ゆっくり前に出てみてください。
いつもよりももを持ち上げるような、この歩き方でOKです。
「本当にこれだけで?」
「一般的に良いと言われている歩き方と、全然違うけど?」
よく言われますが、大丈夫です(笑)
私は治療の現場でもこれで成果を出していますし、足の骨格の仕組みから見てもこれで正解です。
褒めて「やりたい」を引き出すのが重要
これらを通して注意点は、できた部分を見つけてあげて、褒めることが重要。
また正しい歩き方をすれば足は軽く楽になり、痛みは軽減するはず。
それを確認しつつ「ほら、そっちにした方がいいよね」と促すこと。
実は「外」かつ「後ろ」に荷重することも、同じようにその場で効果や体感は確認できるのですが、さすがにそれは一般の方には難しいので、この辺りはプロに任せるとよいでしょう。
まとめ
子供も外反母趾にはなりますし、現代はむしろ多くなっていると言えます。
痛くなくともその影響は全身に出ているので、早期の対処が必要。
お子さん自身で調べることはまずないので、親御さんが気づいてあげたいものです。
原因が良くない歩き方であるため、改善のための対処法もまた足の使い方、歩き方の改善。
あまりにも幼い場合、取り組み方が難しいですが、そのお子さんそれぞれの興味や願望に合わせ、意欲を掻き立てるように持って行きましょう。